インターネットが私たちの生活に不可欠な存在となる中で、ウェブサイトやアプリケーションを利用するユーザーの多様性にも注目が集まっています。

ウェブアクセシビリティとウェブユーザビリティは、いずれもユーザー体験に深く関わる重要な要素ですが、それぞれ異なる概念です。本記事では、これらの違いを解説していきます。

アクセスビリティとは

アクセスビリティとは「Access(アクセスする)」と「Ability(能力)」という単語が繋がった単語であり、障害の有無や年齢、老若男女関係なく、だれにとってもアクセスのしやすい(使いやすい)という意味を持ちます。

ウェブアクセスビリティとは

つまり、「ウェブアクセスビリティ」とは、Web上のアクセスビリティであり、Webの情報にアクセスしやすいことを指します。
もっと詳しく言うと、ウェブアクセスビリティとは利用者の障害の有無や年齢、利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている、情報やサービスを利用できることを指します。

ではどういった状態がウェブアクセスビリティに配慮されたWebサイトでしょうか?

デジタル庁では以下のような具体例を提示しています。

・ 目が見えなくても情報が伝わる、操作できること
・キーボードだけで操作できること
・一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
・音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること

ウェブアクセスビリティの恩恵を受ける人は、日本だけでも400万人を超えるといわれています。
ですので、Webサイトやアプリを作成する際は、ウェブアクセスビリティを意識して制作することが重要になります。

ウェブアクセシビリティが重要な理由

ウェブアクセシビリティの確保は、障害のある人々を含む全てのユーザーに公平に情報を提供するための社会的責任です。

特に、視覚障害や聴覚障害を持つ人々、運動機能に制限がある人々がウェブサイトを利用できるようにすることで、インターネットをより簡単にアクセス可能なものにすることができます。

例えば、視覚に障害があるユーザーがスクリーンリーダーを使用してウェブコンテンツを読み上げてもらう際、そのウェブサイトが適切に設計されていないと、コンテンツの理解が困難になります。これを避けるために、代替テキストを使用したり、十分なコントラストを保つことが求められます。

※スクリーンリーダーとは
コンピューターの画面に表示されている情報を音声や点字に変換するソフトウェア

ウェブアクセシビリティの実現方法

ウェブアクセシビリティを実現するための方法は数多くあります。

①テキストの代替手段: 画像に代替テキスト(altテキスト)を提供し、スクリーンリーダーが情報を読み上げられるようにする。

②キーボード操作のサポート: すべての操作がマウスだけでなく、キーボードでも行えるようにする。

③色覚障害に配慮したデザイン: 色の使い方に工夫をし、色覚障害を持つユーザーにもわかりやすくする。

④音声コンテンツの文字起こし: 音声だけでなく、文字情報も提供して聴覚障害者が情報を得られるようにする。

ウェブユーザビリティ

では、似た単語であるウェブユーザビリティとはどんな意味でしょうか。

ユーザビリティとは

ユーザビリティとは「user(利用者)」と「Ability(能力)」という単語が繋がった単語であり、ユーザーにとってのサービスの使いやすさという意味を持ちます。

アクセスビリティが利用者の障害の有無や年齢などにかかわらずに対して、ユーザビリティはすべてのユーザーが効率的にウェブサイトを操作できることを重視します。

「誰にとっても使いやすい」ための条件のひとつに「障害がある方にとっても利用可能である」という要素が含まれるため、アクセシビリティはユーザビリティの一部であると言えます。

ウェブユーザビリティとは

ウェブユーザビリティとは、Web上のユーザビリティであり、Web上のサービスの使いやすさ、わかりやすさのことです。

デジタル庁によると、“特定のユーザが特定の利用状況において、システム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い”を指します。

参考文献・引用:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」https://www.digital.go.jp/resources/introduction-to-web-accessibility-guidebook/ アクセス日2025年3月21日

ユーザビリティが重要な理由

ウェブユーザビリティの向上は、ユーザーがウェブサイトを使い続けるかどうかに直接影響します。

使いづらいサイトやアプリケーションは、ユーザーを不満にさせ、離脱を招く可能性があります。
逆に、シンプルで直感的なデザインは、ユーザーの満足度を高め、サイトへの再訪問やコンバージョン率の向上につながります。

ユーザビリティの実現方法

ウェブユーザビリティを向上させるための方法には以下のようなものがあります。

①ナビゲーションの簡潔さ: ユーザーが簡単に目的のページにたどり着けるように、シンプルで分かりやすいメニュー構成を提供する。

②レスポンシブデザイン: すべてのデバイス(PC、タブレット、スマートフォン)で快適に使用できるように、デザインを最適化する。

③ページの読み込み速度: ページが速く読み込まれることで、ユーザーのストレスを減らし、離脱率を低減させる。

④フォームの簡略化: 必要最低限の情報を求めるシンプルなフォームを作成し、ユーザーが入力をストレスなく行えるようにする。

ウェブアクセシビリティとウェブユーザビリティの違い

ウェブアクセシビリティとウェブユーザビリティは、どちらも「使いやすさ」を追求しますが、そのアプローチは異なります。

アクセシビリティ: 主に障害のあるユーザー(視覚障害、聴覚障害、運動機能障害など)をターゲットに、特別な支援が必要なユーザーのニーズに対応することを目的としています。

ユーザビリティ: より広範なユーザー(障害のないユーザーを含む)をターゲットに、すべてのユーザーが効率的にウェブサイトを操作できることを重視します。

ウェブアクセシビリティとウェブユーザビリティの融合

アクセシビリティとユーザビリティを同時に考慮したウェブデザインは、すべてのユーザーにとって快適な体験を提供します。

例えば、視覚障害を持つユーザー向けに十分なコントラストを確保したデザインは、目が疲れやすい高齢者や長時間スクリーンを見る必要があるビジネスマンにも有益です。

両者の共通点は、「ユーザー中心のデザイン」に基づいていることです。どちらも「誰もが使いやすい」ウェブを目指しているため、実践することで、より多くのユーザーにとって親しみやすく、利用しやすいウェブサイトを作ることができます。

まとめ

ウェブアクセシビリティとウェブユーザビリティは、異なる概念でありながら、どちらもユーザーにとっての「使いやすさ」を追求するもので、互いに補完し合う重要な要素です。

ウェブサイトを設計する際は、両者を同時に考慮することで、すべてのユーザーにとって使いやすく、アクセスしやすいウェブ体験を提供することができます。

アクセシビリティとユーザビリティの両方を意識したウェブデザインを実践することで、より多くの人々に使いやすさを届けることができると思います!