本日は、近年企業の採用活動で注目されている『採用ピッチ資料』について解説したいと思います。
企業の人事担当者様はじめ、転職活動中の皆様にとって、少しでも参考になれば幸いです。

はじめに

情報爆発とも言える現代社会の情報量の増加。これまでのテレビ、ラジオ、新聞、本だけではなく、インターネットサービスやスマートフォンの普及、LINE、Twitter、Instagram、Facebook、Tik Tok等のSNSの浸透によって、届けたい情報を狙った人に届けること、有益な情報を見つけ出すことがどんどん難しくなってきています。

採用シーンにおいてもここ5年で大きく変化があり、その時勢に合った適切な採用手法を用いていく必要があります。採用情報のオープン化が進む中、より”リアル”な情報を求める傾向が強くなってきています。

そのような中、新たな採用ツールの一つとして注目を集めているのが『採用ピッチ資料』です。

採用ピッチ資料とは?

採用ピッチ資料とは、簡単に言えば、よりオープンでリアルな会社説明資料のことです。

ここで、”ピッチ”とは、ビジネスシーンでは、短いプレゼンテーションのことを指し、「短い時間・簡潔な言葉で相手に提案を伝えること」を意味しています。
※プレゼンテーションとの違いは、主に「対象者」「時間」「内容」です。
プレゼンテーションは、対象の相手は多数いて、時間をかけて、詳しく説明・提案することが多いです。一方、ピッチは、少数の相手を対象に、ごく短い時間で、簡潔に分かりやすく(専門用語を極力使わず)説明・提案することが一般的です。

従来の会社説明資料との違い

会社説明を行う資料という点では、明確な違いはありません。ただ、従来の会社説明資料に比べて、以下のような違いがあります。

  • ターゲット
    従来の会社説明資料は、一般的に、顧客や株主、投資家など様々な方を対象にすることが多いです。一方、採用ピッチ資料は、求職者をターゲットに絞って構成されています。
  • 内容
    会社説明資料では、会社情報や事業・サービス情報、IR情報などの幅広い内容が専門用語を交え記載されます。採用ピッチ資料では、自社で働くことをイメージしてもらうために、会社の文化やmission/value、働く環境、メンバー紹介、抱える課題などについて、より簡潔に、オープンに誰でも見られるよう公開されています。
    ※採用ピッチ資料では、ネガティブな情報を含めた、ありのままの情報を公開する点も大きな特徴です。

採用ピッチ資料を作成するメリット

1.企業の認知度がUPし、応募数が増加する

採用ピッチ資料をWeb上で一般公開することで、企業のリアルな最新情報をいつでも確認することができます。
メディアでの露出や、SNSで拡散されれば、転職活動中の「転職顕在層」はもちろん、これから転職活動を行う可能性のある「転職潜在層」にまでアプローチすることが可能です。

2.リアルな情報を発信することでスクリーニング効果がある

採用ピッチ資料の特徴として、オープンでリアルな情報を盛り込むため、必ずしもポジティブな情報ばかりではありません。求職者は、良い点だけでなく、まだまだ改善の余地がある点も目にした上で応募してくるため、一定数、応募を取りやめる人や選考辞退する人も出てくるでしょう。デメリットのように感じるかもしれませんが、事前にカルチャーマッチしない人材をある程度スクリーニングできるため、人事担当者の負担を軽減させることにも繋がります。

3.入社後のミスマッチを防ぐ効果が期待できる

採用活動における大切な要素のひとつが入社後の定着率です。採用ピッチ資料では、会社のありのままの姿を伝えるため、求職者は入社後の働くイメージについて理解が深まります。結果、「聞いていた内容と違う」「思っていたのと違う」といったことを防げることになり、早期退職を減らせることができるでしょう。

4.社員の自社理解向上にも使える

一般に公開された採用ピッチ資料は、求職者だけでなく社員の目にも触れる機会があります。入社後は機会がなくなり、逆になかなか見えづらくなってしまう会社の情報や現状を知ることができ、自社理解の標準化を進められます。社員が自社についての理解を深めることで、リファラル採用を加速させるためのキッカケや企業紹介ツールにもなります。

採用ピッチ資料に盛り込む内容

採用ピッチ資料にはどういった内容を盛り込むべきでしょうか。

会社のオープンでリアルな情報を掲載し、求職者に訴求する必要があります。まず、作成時には、経営陣や管理職だけでなく、各関係部署から現場社員もバランスよく選定し、5~10名程度のチームで取り組むことをオススメします。

次に実際に記載する内容を決めていきます。基本的な会社情報に加え、自社の良い点だけではなく悪い面や課題も載せ、ありのままの情報を、簡潔に、分かりやすい表現で、誠実に伝えていくことが大切です。

項目例

資料構成は大きく「会社紹介」「企業文化」「募集内容」「その他」の4つに分けられることが多いです。

  • 会社紹介
    会社概要や沿革、事業内容、サービス内容、企業理念・ミッション・バリュー、今後の展望などを記載します。
  • 企業文化
    組織構成、経営陣・社員の紹介、社内・オフィスの写真、企業文化、会社の魅力、課題などを盛り込みます。
    求職者が見て働くイメージを持てるよう、具体的な数値やデータ、グラフ、写真などを使ってビジュアル面でも分かりやすくします。
    ありのままを誠実に伝えることがポイントです。良いことばかりを列挙せず、組織の課題や問題点についても触れるようにしましょう。課題を理解した上で応募してくる意欲の高い求職者に出会える可能性も高まります。
  • 募集内容
    求人情報について記載します。募集背景や募集職種、業務内容や求める人物像について、分かりやすく記載しましょう。文字ベースの内容だけでなく、写真やイラストなども含めることで、単なる求人票では表せない魅力を発信しましょう。
  • その他
    福利厚生や休日休暇、給与テーブルや評価制度、昇給実績等について記載します。また、よくある質問や求職者に向けたメッセージ等を盛り込みます。給与テーブルや評価制度、昇給実績等を公開することで、公平性のアピールにもなります。

採用ピッチ資料の実例

最後に代表的な採用ピッチ資料をいくつか紹介します。

株式会社SmartHR

労務管理クラウド4年連続シェアNo.1を誇る同社は、採用ピッチ資料の火付け役としても有名です。

株式会社ミラティブ

スマホ1台でゲーム配信ができるコミュニケーションサービス「Mirrativ」を運営している同社。
「採用候補者さまへの手紙」という思わず手に取りたくなるようなタイトルで話題になりました。
内容も体系的にまとめられており、直感的にも分かりやすい構成となっています。

株式会社カオナビ

クラウド人材管理システム「カオナビ」を提供している同社。統一されたデザイン性や、企業文化の分かりやすさは目を見張るものがあります。

まとめ

今回は『採用ピッチ資料』について解説しました。採用情報のオープン化が進む現在。新しい情報発信ツールとして、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?